この本の対象読者:
極東国際軍事裁判所やA級戦犯について関心のある人
読書感想:
極東国際軍事裁判所がテーマの新書を読みました.
この新書では、判決とは別に3人の判事によって書かれた参考意見を俎上に載せて、東京裁判とは如何なる裁判だったのかと云うことを噛み砕いて説明しています.
東京裁判では、検察側がまず証拠を集め、その証拠に対して弁護側が反論を行ない、そして判事が判決を出していたことを知りました.裁判は割とキチンと行なわれていたんだな、と思いました.
尤も、東京裁判で追及されたことは「侵略戦争を起こしたこと」と「連合国の捕虜や抑留民を虐待したこと」です.つまり、連合国側の立場から日本の戦争指導者の罪を追求したと云うことです.
翻って言えば、国民が受けた被害に対する裁判ではありません.けれども東条英機や広田弘毅とかがA級戦犯として処刑されたことで、日本国民は戦時中の全ての事が済んだと考えているんじゃないかな.そんな気がします.
軍部軍属特権階級の利益拡大のために日中戦争を開始した罪、特攻を命令した罪、学徒出陣を決定した罪、沖縄戦で民間人を戦闘に巻き込んだ罪、昭和20年まで終戦工作を行なわず戦争継続させて国民の生命財産に多大な被害を及ぼした罪、特高警察や思想検察が行なった人権侵害の罪.
政府は今からでも遅くないから、こう云う事に対して責任を明らかにする必要があると思いますね.
読んだ本の題名:東京裁判「神話」の解体
著者:D.コーエン 戸谷由麻(ちくま新書、880円税別)
発行:2018年11月10日第1刷
(了)