茜町春彦パーソナルメディア

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「読書ログ」

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題名:治安維持法共謀罪
著者:内田博文(岩波新書、840円税別)
発行:2017年12月20日第1刷
人権擁護度:高い
対象読者:治安維持法の歴史的経緯に関心のある人、若しくは、共謀罪に危うさを感じている人

感想:通常の刑法は実際に犯罪を起こした犯罪者に対して罰を与えるものとなっていますが、治安維持法は犯罪を起こす疑いがあるだけで予防的に罰を与えることができました.

そしてそれを戦前の官僚は、政府とって都合の悪い思想を取り締まるため恣意的に使いました.初め共産主義を規制する名目で成立させたあと、自由主義や民主主義や国家主義や宗教も規制するようになりました.そして反戦を唱えた一般人も取り締まるようになりました.官僚は、治安維持法を利用しながら政策に反対意見を持つ者を萎縮させて戦時体制を整えたのです.

戦後になって占領軍の影響下で治安維持法自体廃止されました.しかし官僚は国民の思想を規制する方法を手放したくなかったのです.公安条例などの方法で一定程度は反政府的思想を取り締まる規定をなんとか確保しました.そして更に治安維持法のような強力な規定を再び手に入れようとしていましたが、なかなか成立させることが出来ませんでした.

しかし遂に、テロ等準備罪の創設に成功したのです.表向きにはテロ集団や詐欺集団の犯罪予防を目的として掲げていますが、本当の目的は政府にとって都合の悪い市民運動の規制であろう.警察・検察が実際に運用して行く上で反原発運動とか米軍基地反対運動とか反戦平和運動へ適用を拡大する可能性は否定できないだろう.報道機関は自主規制し、一般市民は萎縮することになるだろう.

およそ以上のようなことが、この本の中で詳細に解説されています.著者は法学部の教授であり専門的な言い回しが多く文体が硬いのですが、読みにくいと云うほどではないと思います.あー、ちょっと読みにくい、あー、だいぶ読みにくいかも知れません、でもその分、法令の解釈は精密だと思います.

余談ですけど、官僚は国民主権が本当に嫌いなのでしょう.国民へ奉仕するが嫌なのでしょう.国民の方が国家へ奉仕すべきと考えているのでしょう.天下るために原発を稼働させたい、日米合同委員会の御機嫌を取るために米軍基地を移転したい、だけどデモとか市民運動で自分たちの政策に反対されるのが癪に障るのでしょう.国民主権を有耶無耶にして、官僚が国民を統制する国家の実現を夢見ているのでしょう.その第一段階としてテロ等準備罪特定秘密保護法を成立させたのでしょう.そんな気がします.

・・・こんなので読書感想と言って良いのかどうか分かりませんが、取り敢えずここまでと致します.では、また・・・