茜町春彦パーソナルメディア

投稿は不定期です.

3話配信

『木の葉』
誰にも見えない川が流れている。
誰にも見えない木の葉が舞い落ちる。
誰にも見えない木の葉が誰にも見えない川の水面を流れて行く。
片耳の聞こえない者が木の葉の流れていく音に気付いた。


『戦争』
縞馬と呼ばれる男が、川獺と呼ばれる男を連れてやって来た。
縞馬が我々に向かって「君たちの中に川獺はいるか」と問うたので「いない」と答えた。
すると「いるか」とまた問うので、「いない」と答えた。
さらにまた「いるか」と問うた.
我々は顔を見合わせながら考え、仕方なしに我々の中で最もみすぼらしい男を指差して「いる」と答えた。
暫らくして戦争が始まった。


『重い扉』
苔むした甲羅を背負った亀が一匹やって来た。
とても短い呪文をゆっくりと唱えた。
重い扉が軽やかに開いた。