茜町春彦パーソナルメディア

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「読書ログ」

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題名:日本の無戸籍者
著者:井戸まさえ(岩波新書、840円税別)
発行:2017年10月20日第1刷
感想:本書は、無戸籍で生きる人たちの苦悩を事例を挙げて知らしめると共に、戸籍制度の問題点を明らかにしています.第1章から第6章まであります.この著者は、戸籍について一生懸命勉強していると思いました.そして問題のある制度を改革していこうとする意気込みも熱意も大いにあると感じました.応援したいと思います.頑張ってください.

第1章では、無戸籍になってしまった人達が就学や就職や結婚などで直面する困難について考察を行なっています.

第2章では、民法772条の嫡出推定の問題について考察を行なっています.
少し引用してみます.
(P70)誰もが生まれ育つ家庭環境から多かれ少なかれ影響を受け、良きにつけ悪しきにつけ親の「因果」からは逃れることはできないということだ.それぞれが生れたときに配られるカードには明らかな違いがある.負荷を背負わなければならない環境に生まれる場合もある.だからこそ、人間の叡智の結実であるべき法律は、この生まれながらにしての差を補い、埋めるためにこそあるべきなのだと思う.逆に、その法律があることで人生の選択肢が狭まったり、ましてや、この再婚禁止期間のように、「子どものために」との美名のもとで、起ってもいない将来の「不貞の抑止」や「離婚の懲罰」として使われている、しかも一方の性のみが対象という差別規定は、即刻廃止しなければならないのである.
引用を終わります.

第3章では、奈良平安時代から中世近世そして戦前戦後現代にわたり、戸籍の成り立ちと歴史について解説しています.

第4章では、戦後の沖縄やサハリンや外地で無戸籍になってしまった人達および自然災害により物理的に戸籍が消滅したことにより無戸籍になった人達について事例を挙げて考察を行なっています.

第5章では、二重国籍の問題と重婚の問題について言及しています.

第6章では、国民を精神的に支配するための道具として戸籍が政府によって使われてきたことなどについて言及しています.
少し引用してみます.
(P198)戸籍は、明治維新を機に、それまでとは違った役割を担うことになった.そして「夫婦同氏」「忠君愛国」等、「日本の伝統」と呼ばれるものには、この時代から始まったものも多い.家制度に関連した「戸籍意識」「戸籍ファンタジー」と言えるような意識はどのように芽生え、戦中・戦後も含めて生き残って来たのだろうか.しかしその意識を形作って来た仕組み自体が、国際化や医学の進歩、また、家族をめぐる価値観の変容の中で崩れ始め、綻びるとともに、逆に回帰傾向も目立つようになって来た・・・
引用を終わります.

余談ですけど、戸籍に住民票にマイナンバー、同じような制度が複数あります.ひとつにまとめてもらえませんかねぇ.これらをイチイチ使い分けなければならないのは、時間と手間と税金のムダじゃないのかなぁ.でも、まぁ、ムダな税金の使い道が、官僚にとってはキット重要なのでしょうねぇ.戸籍のシステム開発を請け負うA社、住民票のシステム開発を請け負うB社、マイナンバーのシステム開発を請け負うC社.これをひとつのシステムにまとめてしまうと、官僚の天下り先が減るので、ワザと冗長な制度にしているような気がします.飽くまで気がするだけですけどね・・・