茜町春彦パーソナルメディア

投稿は不定期です.

掌編物語

『断簡零墨』

むかし、路没都は安泥異土と称して心宿に住んでいた.生活費を稼ぐために、傾奇町のミルクカフェでウエイトレスとして働いていた.そこへ、旅の黒ウサギがふらりと立ち寄った. テーブル席は開いてますか. はい、空いています.全席禁煙です. 当然です!・…

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五行詩『か行』 覚悟のない官吏が金貸しを兼ねる 奇妙な貴族が奇天烈な希望をする 苦学生が苦難と苦悩を区別する 閨閥が計画経済を形骸化する 壊れた国家が国民を告発する

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五行詩『あ行』 赤い悪魔が青い家鴨をつれて現れる 犬追物は言訳がましく命乞いをする 後ろだてを失った牛と馬は動けない 選ばれたものは選んだものに会釈する 落ちぶれた狼のかげで汚吏は恐れ戦く

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『雨の日の青蛙君』或る雨の日の午前、青蛙君の所へ宅配便が届きました. 新潟に住んでいる青蛙君の従弟が甘酒と梅酒と清酒を送ってきたのです.早速、青蛙君は甘酒と梅酒と清酒のカクテルを作って飲みました.ほろ酔い加減の雨の日の午後でした.

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『奥歯』小さな森の桜の木の根元の穴の中に住んでいるモグラ君は、2ヶ月くらい前から悩んでいました.左下の奥歯が浮いているような感じがしていたのです.歯医者に行くべきだと分かってはいましたが、ずるずると先延ばしにしていました. ある朝、歯を磨い…

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『アキラ100%』右手お盆、左手お盆、両手放す、両手お盆、お盆回転. 『サンシャイン池崎』両手腰、重心落す、のけぞる、溜める.「いぃぇえエェーーぇぇえーええぃイイぃィ」

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『赤いテーブル』ピンク兎さんは、白色倶楽部に潜入して情報収集をしていました.赤いテーブルを見つけた時、背後からブルー亀さんに声を掛けられました. 「あなたの名前は何と云いますか?」とブルー亀さんが訊きました.「エイブラハムリンカーンです」と…

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『トースト』ヒツジ君はトーストを作りました.食パンに板チョコを割って載せて、マヨネーズをグルグルっと掛けて、バターをその上に載せて、オーブントースターで焼きました.カカオの匂いがしてきて、バターの匂いもしてきました.出来上がりです.ヒツジ…

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『唄』馬鹿騒ぎはソーダ水の泡 弾けて飛んで消えて行く声を上げて 手を打ち鳴らせ憂うつな鬼どもを 箱の中から叩き出せ明るい夜はまだ続く 月よ、星を越えて行け言いたい事が グラスの中で舞い踊る胸の奥から笑い飛ばせ 『唄』流れて流れて、水に淀むように…

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『一人旅』旅のネズミ君は急におなかが痛くなりました.「これは腎臓結石かも知れない」とネズミ君は思いました.どんどん痛くなって来ました.どこか病院へ行こうと思いましたが、あまりの痛さで動くことも出来ず、その場に一人でうずくまっていました.半…

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『歌唄いの詩』昔のはやり歌を唄うと悲しくなります.楽しかった歌が今は悲しいのです.歌が変わったわけではありません.時が移っただけ.思い出が悲しみに変わるのです.でも私は昔の歌を唄わずにはいられない. 『道』真っ直ぐ行くのも道ですが、曲がるの…

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『自由律俳句』淀む黒田の水に稲穂は実らず、元の白川恋しき. 『漢字五七五』鶏唐揚注文非出来立冷残念次客新作熱

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『散歩』 僕は散歩をしていた. 角を曲がって少し行ったとき、道の向こうから女性がひとり歩いて来た.僕が彼女を見たら、彼女も僕を見た.僕は思わず瞬きをしてしまった.しかし彼女も同時に瞬きをしたようだった.なぜなら僕が目をつぶりかけたときに彼女…

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『コーヒー』青兎の夫婦がレストランにやって来た.ランチには、別途100円支払うと、ホットコーヒーが一杯ついてくる.300円支払うと、飲み放題になる.青兎の夫婦は、共にランチを注文した. そして、飲み放題を一人分注文して、ひとつのカップを使って、二…

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『自慢』3匹の浅蜊が集まって自分たちの殻の模様を自慢していた.1匹目の浅蜊が「私の模様の素晴らしさは東洋一なのよ」と言った.2匹目の浅蜊が「お父さんが云うには私の模様は世界一ですって」と言った.3匹目の浅蜊が自慢を言おうとした時、蛤が1匹…

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『門番』青い雄馬が赤い雌馬を連れて城までやって来た。雄馬は「中に入っても良いでしょうか」と、城の中の王様に訊いた。王様は決断出来なかったので大王様に訊いた。大王様は決断出来なかったので門番に任せた。 門番は「良い」と答えた。 『小鳥』白狐に…

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『木の葉』誰にも見えない川が流れている。誰にも見えない木の葉が舞い落ちる。誰にも見えない木の葉が誰にも見えない川の水面を流れて行く。片耳の聞こえない者が木の葉の流れていく音に気付いた。 『戦争』縞馬と呼ばれる男が、川獺と呼ばれる男を連れてや…

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『無限坂』オレンジ・ネズミ君は、フト気が付くと道に迷っていました.上っても上ってもどこまでも坂が続く、下っても下ってもどこまでも坂が続く.無限坂.そんな坂に迷い込んでしまったら、あなたはどうしますか. 1、たすけを呼ぶ2、途方に暮れる3、勇…